初恋の糸は誰に繋がっていますか?

「私を助けてくれたのは達貴さんですよ?」
「下村を近づけさせないようにしていたのに、近づけて君に怖い思いをさせてしまった」
「大丈夫ですよ、怖い思いなら小さい頃に味わってますし」

途端に彼が息を呑むのがわかった。
強ばった表情に、今の話が達貴さんには余計な言葉だったのだとわかり誤魔化そうとする。

「でもあまり覚えてないですし、今は達貴さんと一緒に暮らせるほど大丈夫ですから」
「そうか。
すまない、嫌なことを思い出させた」

やはり達貴さんがそこを気にしていたのだとわかり、内心ホッとした。

「それで下村のことだが。
君は今日彼に怖い思いをさせられた。
今後どうしたい?」
「どうしたい・・・・・・正直、もう二度と会いたくありません」
「ならつきまといとして被害届を出した方が良い。
接近禁止命令を出してもらえるよう、弁護士にも頼むことにしよう」
「そんな大げさな」
「大げさじゃ無い、君が今後安心に暮らすために必要な行為だ。
だが理世がそこまでしたくないのならそれでいい。
俺が守る。今度こそ」

達貴さんの強い、いや自分を責めるかのようなまなざしに気づいた。
これでは私がずっと達貴さんを拘束してしまう。
そんなことは望んでいない。

「やっぱりきちんと精算したいので被害届も弁護士さんもお願いします。
達貴さんにはまた迷惑をかけちゃうけど」
「俺はもちろん構わないが良いのか?本当に」

のぞき込むような彼に、私は笑ってお願いしますと答えた。
それを聞いて、達貴さんは長いため息をついた。

「良かった。
今後の安全のために出来ることはしておいたほうがいい。
理世は優しいから、またあんな男のことで自分を責めるのではと心配だった」
「ごめんなさい」

勝手に私が下村さんに罪悪感を抱いていた事は気づかれていたんだ。
いつだってこの人は私の心と身体を守ろうとしてくれる。

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