初恋の糸は誰に繋がっていますか?

「明日警察に行こう。
友人の弁護士にも連絡しておく」
「でも明日は仕事が」
「君がこんなことに遭ったことはすぐに社内に広がるだろう。
警察に行くために休んだというのはむしろ後で話すのにも役立つ。
俺も一緒にいるから」
「いえ、私だけで。
達貴さんこのことも調べていたのなら、仕事も相当大変な状態なんでしょう?
無理矢理休みも作って私に付き合ってくれたし」
「君は酷いことを言うな」

彼は言葉に反して目は優しい。

「俺が仕事してる方が気楽というのならそうするが」
「そんなことないです!
一緒にいる方がいいです!」

驚いて否定すると彼は軽い笑い声を上げた。

「俺だって君と出来るだけ過ごしたいんだ。
それが仕事をするモチベーションアップになる。
そもそも何でも一人で仕事をしているわけじゃない。
優秀な秘書もいるし、部下もいる。
そういうことが出来ることも能力のうちだと思っているんでね。
だからそこまで気にする必要は無い。
そうだ」

彼が思いついたように声を出した。

「商品発表を終えたら温泉にでも行かないか?」
「温泉?」
「あぁ。時折一人で行く宿があるんだ。
車で行くような場所だが、静かで料理も温泉も良い。
リフレッシュがてらいかないか?」
「行きたいです!」

思わず彼の方に身を乗り出して言うと彼は決まりだと笑った。

「新婚旅行はもちろん別にゆっくり行こう。
結婚式も考えた方が良いだろうし」
「結婚式、ですか?」

達貴さんから新婚旅行や結婚式の言葉まで出て驚きと共に戸惑う。
本当に一緒にいようと思っているのだろうか。
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