初恋の糸は誰に繋がっていますか?

第九章 初めての温泉旅行


新商品のプレスリリース直前に、ライバル企業がプレスリリース日を変更したという情報がメンバーに届いた。
警察の調査で、やはりうちの元社員が情報を流した相手はライバル企業で確定した。
情報を受け取った社員だけの独断だったそうで、相手企業はそのデザインが純粋に発注して出来上がった品だと信じていたらしい。
よってデザイン変更となって相手企業は色々な面で混乱しているそうだ。
プロジェクトメンバーの中では、相手企業は知っていたのでは無いか、このことが公になって社員一人に押しつけ火消しに走っているのではという意見が多く出た。
もしもそうなら、首を切られた社員が週刊誌に真実を売るだろうさ、企業内の他の情報も一緒にと言っていたので、それはうちの会社も巻き込まれるのではと皆なんとも言えない気持ちになった。

案の定首を切られたライバル企業の社員が暴露し、当然うちの会社のセキュリティや社員対応も批判の矛先は向いたが、これを予期していた会社側がすぐさま火消しに走ったことが功を奏して、むしろ新商品のプレスリリースではマスコミが予想外に増えることになった。

達貴さんはピンチはチャンスだとプロジェクトメンバーを鼓舞し、新商品は注目されたおかげか売り上げは予想以上の滑り出しとなった。
その裏で達貴さんがマスコミや社内にも根回ししたことが大きいことは、プロジェクトメンバーは聞かされなくても理解していた。

これなら企画部も問題なく立ち上げとなるだろう。
いくつも起きたトラブルも乗り越えた達貴さんは、以前よりも力を持つ立場になっているのは明らかで、あれだけわかりやすく彼を非難していた上層部も表だっては言わなくなった。
達貴さんはむしろその方がタチが悪いのだと苦笑いをしていたが。


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