初恋の糸は誰に繋がっていますか?
一緒に住んで数ヶ月、未だ寝室は別、スキンシップは抱きしめてくれることと手を繋ぐこと。
キスしてくれるのかな、とドキドキしても、彼は一瞬でその空気を変えてしまう。
だけれど温泉に泊まりで誘ってくれたと言うことは、夫婦として前に進もうという彼なりのサインだと思っている。
私も旅行に喜んだけれど、旅行自体は楽しみであるけれどそこで起きるかもしれないことにはドキドキしてしまう。
今日にあわせて彼が好んでくれそうな上品なランジェリーを身につけ準備万端。
そうはいっても怖い、という気持ちが無いわけでは無い。
もしそういう場面になって体が悪い方に反応してしまったら。
達貴さんは優しく無理強いなどしないかもしれない。
反面、裏ではがっかりして下村さんのような選択をとられても自業自得だ。
だって下村さんの時は交際していたというだけだけれど、達貴さんは夫で私は妻。
今後は子供をどうするかも考えなければならないのに、今から今夜拒絶するかも知れません、すみませんなどと言えるわけも無く。
車は次第に両端が木々に覆われた道をくねりながら上っている。
楽しみだけれど不安な気持ちも抱いて緑の木々を窓から眺めていた。
ついたのは山の中腹にある和風旅館。
山を抜けるようなスカイラインから横にそれ、奥まった場所に現れたのは和風ながらもお洒落な建物だった。
広い駐車場に止まって降りる準備をしていたら、旅館の玄関は遠いはずなのに和服姿の男性と女性があっという間に車の横に来た。