初恋の糸は誰に繋がっていますか?

「森山様、お待ちしておりました」
「お世話になります」

男性はまずは私に会釈をした後に達貴さんの窓の側に行って会釈した。
馴染みの宿というのは車だけでわかるのかとびっくりしてしまう。
女性が私の旅行鞄を持ってくれ旅館の玄関に案内されると、木目の広いロビーとソファーがある奥にはガラスが一面にあって広い庭園が見えた。

「ロビー横のコーナーでは二十四時間お飲み物などを自由にお飲みいただけます。
夕方まではスタッフが抹茶を点てますのでお気軽にお声がけ下さい」

男性スタッフが笑顔で説明してくれる、主に私に向かって。
達貴さんは慣れているので説明が不要だからだろう。
そんな達貴さんは私の反応を見ては口元は弧を描いている。
母屋のような建物から何故か外に出て屋根のある通路を歩く。
時々そこから一つ一つの離れが並び、離れに入る玄関は通路を向かないような設計になっていた。

「どうぞお入り下さい」

一番奥にある平屋の建物にたどり着く。
和風の引き戸が開けられると明るい木目の玄関に長い廊下がのびていて、木の良い香りがふわっと鼻に広がった。

「こちらはお食事をお出しするお部屋、奥がリビングになります」

案内されながらこの離れが驚くほど広い部屋だとわかった。
通路を挟み寝室は別。
お風呂は内風呂は檜、外にも岩の露天風呂があって三人は軽く入れそうだ。
何より露天風呂のある外の景色が素晴らしかった。
リビングから見える先はウッドデッキが広がり、周囲の高い木々から木漏れ日が木々があるものの鬱蒼とはしておらずその先には川が流れていて鳥の鳴き声が聞こえる。

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