初恋の糸は誰に繋がっていますか?
その後は二人でソファーに座り、のんびりと過ごしていた。
外は既に真っ暗だが、ウッドデッキの周囲にランプが自動で点灯していて、淡いオレンジ色がまた良い雰囲気を醸し出している。
テレビはつけずに備え付けられてあるオーディオに、これまた種類の豊富なCDから達貴さんがセレクトしたクラシックが部屋に流れていた。
生でコンサートを見たのは学校の社会科見学くらいだと言ったら、今度コンサートに行こうと達貴さんが提案してくれた。
お洒落をして行くのも良いし、カジュアルに楽しんでも良いと彼は言いながらも、そこに行くなら私の服を選びたいという。
どうか高級店は止めてくださいとお願いすると、彼は考えておくと笑った。
「そろそろ結婚式について考えないといけないと思うんだが、理世はどうしたい?」
「入籍自体が急だったのであまり本格的なことを考えたことは無いんです。
ウェディングドレスは着たいなぁと思ってるんですけど」
「そうか。なら披露宴とかでお色直しがあれば、白のウェディングドレス以外にカラフルなドレスを着ることも出来るな。何着着たい?
いや、別に色々着るなら披露宴は必要ないか」
顎に手を当て真剣に考えてくれる達貴さんに慌てる。
「いえいえ、そんな大事にやるのは。
披露宴ってお金がかかりますし。
達貴さん自身は結婚式はどうしたいんですか?」
「俺も真面目に考えたことは無かったんだが、父親は仕事上披露宴をあげて欲しいと思っているのは知っている。
母は君の意思を尊重すると思うよ」
「あの、ご両親とは証人として書いてもらう数十分しかお会いしてないのでわからないのですが、お父様の仕事上というのはどういう意味ですか?」
彼はあぁそうか、と言うと困ったように頭を掻いた。
「すまない、君に話していなかったことがある」
彼が難しい顔で私を見る。
なんだろう、あの時は渋々証人として証明したけれど、別れなさいとか言っているのだろうか。