初恋の糸は誰に繋がっていますか?

「俺の父親は会社の社長だ」
「はい?」
「両親の苗字は高木。
父がTAKAGIで社長をしている。
祖父が創業者なんだよ」

そういえば署名してくれた達貴さんのご両親の苗字は高木だった。
だけれどそれと会社の名前は今まで結びついてなかった。
社長と達貴さんが話をしているのを社内で見かけたことがある。
でも親子というのでは無く、社長が部下に指示しているというように見えた。
社長自体は入社してそんなに見たことが無い。
遠くで見かけるだけで、まさか親子だなんて話自体も聞いたことが無かった。

「あの、でも苗字が違いますよね。
そもそも会社で親子なんて噂も聞いたこと無いです」
「社内では親子としては接していないからね。
社長の秘書含め社長が信頼している複数名しか俺との関係を知らない。
苗字が違うのは、俺が母の連れ子だというのが理由だ。
母は結婚して父の苗字に変わったが、俺は母の苗字のままで父親とは養子縁組をしていない」
「え、それは」
「誤解しないでくれ。
父親は最初から養子縁組するつもりでいたのを俺が断ったんだ。
まだその頃は創業者だった祖父の力が強くてね、両親の結婚を反対したんだ。
父親に後を継がせた先代としては、父の血が入った跡継ぎに次を託したかったんだろう。
母が再婚したとき俺は高校生で、そういうのを直接聞かされなくても耳には入っていたんだ。
母の再婚の邪魔にはなりたくなくて、こういう形を取った。
結局二人には子供が恵まれなくて、祖父は今では俺に後を継いで欲しいと思っている。
父親は無理する必要は無いと言ったけれど、次いで欲しいという気持ちは伝わっていた。
だからどうせなら、社長の息子という肩書き無しに俺がどこまでいけるか見てから考えて欲しいと言ったんだ」

常務がこの若さで上り詰めているのは、社長の親戚だからとか、ご機嫌取りをしているからという陰口はきいたことがある。
しかしまさかそういう関係だったなんて。
母子家庭で家事をしながら勉強し、お母様が再婚後はお母様達の幸せを一番に考えて努力してきたんだ。
やっぱりこの人は凄い。

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