初恋の糸は誰に繋がっていますか?

第十章 初恋の糸は貴方の指に



風呂上がりにいちゃつく場合も考え可愛いランジェリーでいざ寝室にと覚悟をして行けば、今日は疲れただろう、ゆっくり寝ようと達貴さんは私に言った。
肩すかしを食らった顔を私はしていたのだろう、彼は優しい顔で私の頬を撫でた。

「理世を怖がらせるようなことはしないよ。
入籍を急いで普通のカップルがするデートやお互いを知る時間を飛ばしてしまった。
これからゆっくり時間をかけて、理世が大丈夫だと思えたときに考えてくれれば良い」
「・・・・・・うん」

二人で各々の布団に入る。
お休みなさいと言って目を閉じた。

ホッとした。
はしゃぎながら、騒ぎながら、内心はずっと失敗したら、失礼な態度を取ってしまったらって恐怖心があった。
きっと達貴さんは内心怯えている私に気づいていたのだろう。
彼は優しいから無理強いはしないはずだなんて思っていたけれど、その通りになると今度は違う不安が襲ってくる。

やはり彼は私が心配で入籍しただけで、女として見ていないのでは、と。
可愛いとか大切だと言われるけれど、それは子供扱いというか保護対象としか彼の中では見ていないのでは無いだろうか。
私に色気が無いのはわかっている。
彼が今まで交際した女性の誰よりも、きっと私に女性の魅力は無いだろう。
そんな彼がただの平社員で取り柄も無い私を選んだ。
やっぱり彼は、なんてずっと思っていたことをまた思い返してしまう。

違う、そうじゃない、彼は私のことを大切にしてくれる。
それは充分にわかっているけれど、女性としてどう思っていますかなど聞ける勇気は無い。
私が怖い思いをして同居になったとき安心して彼の側に居られたのは、彼があるいみ私に対して性的な空気を一切感じさせなかったからだと思う。
でも問題が落ち着いた途端に、今度は女としてみて欲しいだなんて虫が良すぎる。
静かに彼とは反対側を向いて、この身勝手な気持ちをどうすれば良いのかわからなかった。
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