初恋の糸は誰に繋がっていますか?
翌日も彼からのメッセージは入り続けた。
日本にはまだ戻らない以上、離婚届を出さないのだからメッセージは見ない方が良い。
家にいるのも気が滅入り、午後になってふらりと外に出た。
電車に乗り、降りた駅は幼い頃に住んでいた街。
両親はここで起きた出来事を出来るだけ私に思い出して欲しくは無かったのだろう、小学校の途中だというのに引っ越して転校になった。
随分とそれから経っているのになんとなく道を覚えているものだ。
しばらく歩いて、あの公園にたどり着いた。
「こんなだったかな」
シーソーなどの遊具はほとんど無くなり、公園の真ん中に象の滑り台と砂場がある。
もっと広かった記憶があったが、そこまで広い公園では無かった。
青く綺麗に塗られていた象は、色がはげたのかほとんどコンクリートのような下地が出ていて、青色もくすんで色が飛んでいる。
夕方前というのに公園では誰も遊んでいない。
ベンチは作り替えたのか、以前とは違う場所にいくつかある。
私は象の滑り台に近づいて、古びた象を撫でた。
下の穴を見れば二人は入れる広さがあったと思ったけれど、今の私なら一人入るのが精一杯の大きさだった。
中に入り昔のように座り込む。
ここで隠れてあの頃はよく泣いていた。
でも、それを救ってくれたのはお兄ちゃん。
その彼が、大人になって怯えていた私をまた助けてくれた。
私が子供の頃の出来事を話していた時、彼はどんな思いで聞いていたのだろう。
きっと苦しい思いをしていたに違いない。