初恋の糸は誰に繋がっていますか?



以前座った場所とは少し離れたベンチに二人で座る。
何を言えば良いかわからずに黙っていると、彼が口を開いた。

「離婚届を見つけて驚いた。
それは、君が俺をあの頃の子供だと気づいたことに関係しているのか?」

私は頷く。

「初恋の彼が逮捕されたのだと話していたが、その彼ではなく俺だったからショックで別れたくなったのだろうか」
「いえ、違います!」
「なら教えて欲しい。
いなかった間に下村か誰かが接触してきたのか?
それとも何か俺が君を傷つけるようなことをしてしまったのだろうか。
情けないが俺はわからないんだ。
だから、教えて欲しい」

何故こんなときでも自分が悪いだなんて思ってしまうのか。
私の身勝手な気持ちと行動だけだというのに。

「地震で倒れた物を片付けていたら見つけたんです、達貴さんの昔の苗字が書かれていた本を。
最初はまさかと思いました。
でもあの本に書いてあった文字と私にくれた手紙の文字が似ていたので、貴方がこの公園でいつも会っていた中学生だと気づきました。
そして旅行に行ったときの傷と、彼が男に怪我を負わされた場所が同じだと思い出して。
もう間違い無いと確信したんです」
「そうだったのか。
あの時の手紙をお守りとして今も持っていると聞いたときは驚いた。
君の家のポストに入れたことは覚えているが、書いた内容までは流石にほとんど記憶に無かったから何を書いたのか気になったよ。
あの時気づかれた傷が後押しになったのか。
見せてしまったときは不味いと思った。
今まで見せないようにしていたけれど、旅行に行って嬉しかったせいかな、気を抜いていた」

彼は苦笑いで話す。
私は下を向いて黙っていた。
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