初恋の糸は誰に繋がっていますか?


「もしかして、俺があの時のことを後悔していると話していたから君に結婚を申し込んだとでも思ったのか?」

固い声が横からして、私は膝に置いていた手を堅く握る。

「誤解を生んでも仕方が無いな。
だけど結婚を申し込んだのはあの時の事件があったからじゃない。
今の君を知って、守りたくて」
「だから!達貴さんは勘違いしているんです!
昔の事件は達貴さんに何一つ問題が無くて、いや全て私が悪くて。
それをずっと達貴さんが後悔しているなんて言われるまで思いもしなかった。
だから今の私起きた出来事で、達貴さんは勘違いしているだけ。
私を好きというのは子供の時からの思いで、今の私というわけじゃ無いんです」

何を言っているのか自分でもよくわからない。
また涙が出てくるのをぐっと耐えた。

「理世も勘違いしている。
確かに子供の頃の出来事が関係していないわけじゃ無い」
「ほら!」
「子供の頃の出来事があったからこそ君を長く知っていると思っている。
だからまた今の君を知って好きになったからこそ結婚を申し込んだんだ。
子供の頃のこともあの男のこともきっかけだ」
「でもそれが無ければ達貴さんは私と結婚したいとは思わなかったはず」
「そうだな、君が子供の頃のことを俺がいることで思い出すのでは、それで怖い記憶に悩まされるのではとためらいはあった。
だけど、あんな男に君を渡したくは無かった。
一緒に住んで君と結婚できるのなら、どんな手段でも利用しようと思ったずるい男なんだよ、俺は。
君が思うほど俺はそこまで優しくは無い」

思い切り優しいじゃ無い。
こんな言い方をしてるのだって私の心の負担を考えてだと思ってしまう。

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