初恋の糸は誰に繋がっていますか?
「本当にありがとうございました。
常務が一緒に居て下さったので安心して帰れました」
「・・・・・・やはり何か安心して帰れない理由があったんじゃないか?」
思わず口を滑らせてしまった。
鋭い指摘にギクッと身体が反応する。
私は必死に作り笑顔を作り、
「いえ、一般論です。
遅い時間に送っていただき、本当にありがとうございました。
常務もお気をつけて。では明日」
笑顔でとにかくありがとうございましたというごり押しをすると森山常務はじっと私を見ていたが、ふいに持っていた茶色の鞄を開けると中から何か取りだした。
あれ、ここで名刺交換?などと訳の分からないことを思ったら常務が私に差し出した物を見て驚いた。
「さっき友人の家に行っていたと言ったが、そこの子供からもらったものなんだ。
私は食べないから君が食べてくれると助かる」
私の手に置かれたのは長年子供に人気のキャラクターが描かれたチョコの袋。
未だにスーパーやコンビニに置かれているもので懐かしさが湧く。
「これ、子供の頃よく食べてました。懐かしい」
大人で冷静な常務から想像できない可愛いお菓子の登場に、思わず頬が緩む。
咳払いがして常務を見ると、彼は何とも居心地の悪そうな顔をしていた。