初恋の糸は誰に繋がっていますか?
広い会議室の楕円形のテーブルには、今日の出席者が座っている。
会議の始まる前、会議室の準備を頼まれた私は司会者に指示をされた。
上座に近い席を二席空けておくようにという指示だ。
もしかして協力企業の人が遅れて参加するのだろうかと思いつつ指示に従い、そこにも資料を置いておいた。
私は会議の準備だけで終わると思っていたのに、何故か今日の会議の議事録作成担当に指名された。
どうして私がなどと聞ける時間も無く、スクリーンに映されるスライドも確認しながらパソコンのキーボードを叩く。
それが一段落して議事進行の社員から合図を送られたので私は立ち上がり、会議室の電気をつけた。
その社員は自分のスマートフォンを確認すると立ち上がってドアの方へ行く。
「では今回プロジェクトに加わって下さる、デザイン会社フィグスのお二人をお招きします」
議事進行の男性が会議室のドアを開けると男性と女性が入ってきて、私はその男性を見て目を見開く。
向こうも私に気付き、ふわりと笑みを向けてきて私は反射的に顔を逸らした。
(なんであの人がここに・・・・・・)
「フィグスの下村浩二です、こちらはサポートの山本です。
素晴らしい商品に関われることを楽しみにしております」
彼が笑顔で見渡すと森山常務が立ち上がって、
「こちらも楽しみにしていますよ」
手を差し出した常務に、浩二、いや下村さんはにこにことしながらその手を握った。
周囲から拍手が湧き、私もハッとして手を叩いた。