初恋の糸は誰に繋がっていますか?


「理世!」

会議が終わり皆部屋を出て行く中、会議室の片付けを始めた私は名前を呼ばれ動きを止める。
目の前に来たのは元カレである下村さんだった。
流石にもうあの頃のように浩二、などと下の名前で呼ぶ気はしない。
以前はもう少し長かった髪は短くなり、スーツ姿は初めて見た。
私の強ばった表情を見たせいか、彼は困ったような顔になる。
まだ周囲に会社の人がいてチラチラと視線が向けられているのに気付き、まずは注意をした。

「すみませんが名字で呼んでいただけませんか」
「ごめん、つい懐かしくて。
もしかして彼氏に誤解される?」

探りを入れてくるような彼に、私は黙り込んだ。

「どうしても理世と話がしたいんだ。
七時にここの下で待ってる」
「そんな!困ります!」

彼はさっきの注意も忘れそして私の返事も聞かずに、後でと笑顔を見せて入り口近くで待っていた女性と部屋を出て行った。

昨日は初恋相手の逮捕のニュースを見てショックを未だ受けているというのに、今日は元カレが出現した。
別れてからずっと会っていなかったし、まさかこんな場所で再会することになるなんて。

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