初恋の糸は誰に繋がっていますか?

「理世、綺麗になったな」
「なに、急に」
「いや、最初見たときは一瞬違う人かもって思った。
だけど金沢さんって呼ばれてて確信できた。
こうやってまた会えるなんて運命じゃ無いかなんて思って、会議中なのにそわそわしていたよ」

食事が運ばれ、彼が食べようと促す。
嬉しそうな彼を見ながら、私はなんとも言えない気分であの頃と同じ味のハンバーグを口に運ぶ。

「・・・・・・今、付き合ってるやつ、いるの?」
「え?」
「凄く綺麗になったから、そいつのせいなのかなって」
「別に綺麗になったとかそんなのはないよ」
「それって誰とも付き合ってないって意味?」

上手く誘導されている気がする。
彼は学生の頃から頭が良く、意見の割れるゼミの皆をまとめるのが上手かった。
それはある意味で、上手くまとめる方に皆を誘導できていたからだ。
今もコンペを勝ち取るくらいの能力なら、より磨きがかかっていてもおかしくない。
黙り込んだ私に彼は、

「ごめん、困らせるつもりはないんだ」
「私、プロジェクトに補佐みたいなものだけど関わることになったの」
「あそこに座っていたから当然メンバーなのかと思っていたけど違ったんだ」
「総務部だから、最初はあくまで今日の会議の補佐として呼ばれていっただけで。
だけど今後も関わって欲しいって言われて」
「理世は昔から丁寧に物事をこなしていたもんな。
そういうところを会社はきちんと見ているんだと思うよ」

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