初恋の糸は誰に繋がっていますか?
彼の優しい笑みに、私はこの人のこういうところが好きだったのだと思い出す。
ゼミで雑用をする私を、気付いてくれて褒めてくれたのは彼だ。
あの頃と同じような店で同じようなハンバーグを食べ、目の前にはあの頃交際していた彼がいる。
だけど、今は違う。
「下村さん」
「やだな、そんな他人行儀な呼び方。昔みたいに下の名前で欲しいな」
「今はただ、仕事で再会しただけの関係でしょう?
それに下村さんが私を下の名前で呼んだのに会社の人が気付いてしまったの」
「関係を聞かれた?」
「不審そうな顔をされた。
これから力を入れていくプロジェクトなのに、妙な事が起きたらと心配したんだと思う」
「僕たちが付き合っていたってそこは関係ないでしょ?」
「え?」
思わず驚いて言えば、彼は照れたように笑う。
「だってさ、理世は今誰とも付き合ってないし、僕も一人。
再会してまた付き合うようになったとしても、そこと仕事は別じゃ無い?」
「待って。
そんなあり得ない仮定を持ち出されても困る。
私は下村さんとはあくまで仕事上の付き合いでしか考えていない」
突然交際スタートが当然のような流れで私は驚きしっかりと意見を言った。
だけど彼は寂しそうな表情を浮かべる。