初恋の糸は誰に繋がっていますか?

第三章 予期せぬお泊まり


それから二週間ほど。
下村さんとの再会に困惑したり通常業務に新規プロジェクトの仕事も増え、忙しい日々にすっかり帰り道で聞いた不審な靴音のことなど私は忘れていた。

今日は会社の情報セキュリティチェックが社員に抜き打ちで行われた日で、見事引っかかった社員の一人が総務部へ怒鳴り込んできて騒ぎとなった。
その男性社員曰く、こういうゲリラ的行為は社員を信頼していない証しであり会社によるパワハラだというのだ。
皆呆れかえっていたが元々トラブルを起こしやすい社員だったとのことで、人事部がこちらに事情を聞きに来てまたその対応でも時間を取られてしまった。
家に着くのは十時回るか回らないか微妙なところだろう。

総務部ももう少し押しの強い人がいればスムーズに対応できたのにと不満を抱えつつ地元駅を降りて家に帰っていると、自分の背後で靴音が聞こえることに気付く。
一瞬であの時のことが蘇った。
急ぎ足で進めば、その靴音もペースが速まった。
女性か、男性か、靴音だけなら男性に思えるが振り返るより恐怖が勝る。

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