初恋の糸は誰に繋がっていますか?

「どちらまで行かれますか?」

ドアが閉まり年配の男性運転手が聞いてきて、私はどこに行くべきか考えず乗ったためとりあえず駅を言おうとした。

『今から言う住所を伝えるように。
私がそこにいるから』

私が口を挟む隙も無く、住所を告げられる。
運転席からこちらを不審そうに見ている運転手に言われた住所を告げると、わかりましたと車は進み出した。
私は恐る恐る振り向いて外の様子をうかがう。
だが歩道には時々人がいる程度で顔や服装も詳しくは見えない。
一気に肩の力が抜け、シートの背もたれにもたれかかった。
何か声が聞こえて、スマートフォンを繋げたまま耳から遠ざけていたことに気付いて慌てて耳に当てる。

「耳から離していました、すみません!
言われた住所に向かっていますがあの、その住所はどこになるのでしょうか」
『私の家だよ。
そこからなら三十分くらいで着くから下で待っている。
通話は切るが心配ならすぐかけるように、いいな?』
「はい、わかりました」

私が他の言葉を話さないか確認するように、数秒時間をおいて通話は切れた。
まさか言われた場所が常務の家の住所だなんて。
怖さで緊張していたはずが、今度は常務の家ということで緊張が高まってきた。

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