初恋の糸は誰に繋がっていますか?
しばらくして着いた場所は、同じ沿線でも会社に近く高級住宅地のあるエリア。
そんな場所にある駅前のタワーマンションだった。
マンションには大きな車寄せがあり、そこに背の高い男性が一人立っている。
常務だ。
タクシーが近づくにつれ服装が見えてきたのだが、白いシャツにパンツ姿、単にスーツのジャケットだけ着てないように見えた。
タクシーが常務のいる少し手前でわざと停まった。
彼はこちらに気付き歩いてくると、後部座席の窓に顔を近づけたので私は窓を開ける。
「これで支払いなさい」
手渡されたのは万札。
断ろうとしたがタクシーの運転手がどちらでもいいから早く支払ってくれという雰囲気を出しているのがわかり、私はお礼を言って常務からお金を受け取り支払うとドアが開く。
常務は慣れたように私の手を取って、車から降ろしてくれた。
「まずはおつりを」
「怪我とかしていないか?」
「いえ、何も無いですから」
お金を返そうとする私を無視し、彼は私の手や足に怪我をしていないか顔を動かして確認している。