初恋の糸は誰に繋がっていますか?
「見える範囲では怪我とかは無いようだが、足をひねったりはしていないか?」
「とりあえずおつりを。
本当に大丈夫です、ありがとうございます」
やっと常務は受け取ってくれたが、私を見下ろす鋭い目にビクリとした。
「何か、身の危険を感じることがあったんだろう?」
見抜いている目で見られて私は思わず俯いた。
頭に大きな手がふわりと乗って思わず顔を上げた。
「怖かっただろう。良かった、無事で」
急に先ほどまでの怖さが襲ってきた。
緊張していたのか、常務の手と優しげな声で一気に泣きそうになる。
「明日は土曜日だ。
とりあえずうちに泊まっていくと良い」
泊まる?!常務の家に?!
唐突すぎる提案を聞かされ固まっている私に常務は少し口元を緩ませ、私の手を取ると歩き出した。
大きな手は強く握りしめているわけでは無いのに、全て包み込むような安心感を与えてくれる。
マンションの厳重な入り口を通ると豪華ながらも洗練されたエントランスホールが飛び込んできた。
床や壁一面には白の大理石、高い天井からは吊り下げ型のお洒落なライトがホールを明るく照らしている。
シンプルで四角い白のソファーがいくつか並べられ、奥にいる男性コンシェルジュが笑顔で出迎えた。