初恋の糸は誰に繋がっていますか?

「今回のプロジェクトを機に、企画部を正式に立ち上げようかと思っている。
それで、君は興味があるのか聞きたかったんだ」

目を丸くする。
企画部に入れるような目立った何かをした記憶は私には無い。
なのに何故声をかけてくれたのだろう。
知らないうちに各部署の情報を集めていたとしても、自分には何か秀でたものを持っているわけでもないのに。

「もちろん部を作る為の足がかりにもこのプロジェクトは必ず成功させたい。
専門的な外部に頼るのも、戦略としては良いと思っている。
だがこの先を考えると、ある程度我が社でも対応できるようにしたい。
今は主に営業部が担当しているが、やはりマーケティングを集中してやれる方が営業部にとっても良いだろう。
そもそもメンバーは私が選んだのだが、プロジェクトを通してそのメンバーがどう動くのか確認するためのものでもあった。
今に状況なら全員企画部メンバーとして相応しいと判断している。
だから君にその意思があるか確認しようと電話を掛けたんだ」

やはり常務は先を見ている。
みなあったほうが良いと思いながらも面倒で手を出さなかったところを率先して動いているのは、風当たりも強いはず。
今までプロジェクトの度にその分野に詳しいメンバーを集めていたが、ある程度固定する方がノウハウは蓄積できる。
そのメンバーに考えてもらえるなんて光栄な話だ。
しかし、それを何故仕事が終わったあんな時間に電話を掛けてきたのかというのは理由としては腑に落ちない。
彼は自分が残業しても、周囲にそれを強要することはしない人。
ということは。

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