初恋の糸は誰に繋がっていますか?
幼いながらも彼に恋心を抱くには時間がかからなかった。
少しでも彼に会いたいと公園で待つ。
公園で一人悲しみを堪えていた時間は、彼を待つことで楽しみへと変わった。
彼には一人でいるのは危ないからまっすぐ帰るように言われたけれど、家にも近く人の多い公園で待つから大丈夫だと、子供の私はそんな心配を真面目に聞いてはいなかった。
そんなある日、私がベンチで本を読みながら彼を勝手に待っていたら声をかけられた。
あの男は父親よりもっと上の年齢だったと思う。
駅に行きたいが迷ってしまった、どっちに行くか教えてくれないかと困っていた様子だった。
私は家族から困った人には手を貸すように言われていたので、何の疑いも無く駅の方向を説明した。
だが男は分からない場所だから、せめてもう少し駅に近い場所まで案内して欲しいという。
そう言いながら大きな手が私の腕を掴み、私は硬直した。
これは道案内なのだろうか、普通のことなのだろうか。