初恋の糸は誰に繋がっていますか?

「わかりました。お言葉に甘えさせて貰います」
「・・・・・・もしかしてまだ眠くないのか?
いや、一人になるのが怖いか?」
「・・・・・・はい」

いつもなら違いますと答えるはずなのに、森山さんに言われれば甘えてしまう。
呆れられるかと思ったら、彼は立ち上がり私の手を引っ張るとソファーに座らせリモコンをいくつも持ってきた。

「これがテレビ。これはブルーレイレコーダーのだ。
その辺の段ボールに映画とかのDVDが入っているし、オンデマンドで好きなものを観ても良い。
好きに過ごして眠くなれば寝なさい」
「ごめんなさい、困らせて。
流石にテレビをつけたら仕事の邪魔になりますし寝ます」
「知らない家で緊張して眠れないのは無理もないことだ。
私は音などあまり気にならない。
そんなことより、自分が安心できる方法を君は優先すべきだ」

そう言うと彼はテレビをつけた。
ちょうど流れてきたのは去年放映された人気の恋愛映画。
見たいと思って映画館に行けずに終わったから、いつかオンデマンドで見ようかと思っていた作品だった。
森山さんはすぐに私の反応に気付いたようで、リモコンを私の横に置く。

「身体だけ冷やさないように。寒かったらすぐに言うんだ、遠慮せずに。
私は風呂に入ってくる」
「すみません、何から何まで」

頭を下げると、大きな手が私の手に乗った。
そしてゆっくりと撫でられる。
私が上目遣いで森山さんを見ると、彼の目はとても優しくて私はその目に引き込まれるように見つめていた。
そっと手が離れ、森山さんはリビングのドアを開けてバスルームへ行ってしまったようだった。

そっと自分の頭に手を乗せ、普通ならあまり男性から触れられたくはないはずなのに森山さんからされるとこんなにも心地よく感じてしまうことに驚いてしまう。

「森山さんが優しいのは過去のことがあるせいで私だからって訳じゃ無い。
それは分かってるけど、こんなことされればやっぱり素敵だと思っちゃうよ・・・・・・」

目の前ではヒロインの少女を助ける素敵な男性とのシーンが流れている。
幼なじみであるその少女を、慈しむように彼はその頭を撫でる。
あぁ、これだ。
手を繋がれたり頭を撫でられることを思い出し、森山さんからすると私は子供に見えているのかなと複雑な気持ちになりながらその映画を見ていた。




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