初恋の糸は誰に繋がっていますか?

第四章 両手に同居話


翌日、朝起きると森山さんが手慣れたように朝食を用意してくれた。
Vネックで深い紫色のカットソー、パンツはグレーでノータック細身のものだが、すらりとした脚がスーツよりも強調されている気がした。
彼がテーブルに物を置く度、Vネックから見える男性らしい鎖骨に目が行ってしまい、自分がそういう視線を向けてしまったことがもの凄く恥ずかしい。

「日頃は簡単に済ますんだが」
「私もです。
こんな豪華な朝食、何から何まですみません」
「いい加減謝らなくて良い」

はい、と答えると森山さんの眉間に皺が寄る。
うん、と言い直すと彼は表情を少し緩めて珈琲を用意してくれた。
珈琲の香りと焼きたてのパンの香りが食欲をそそる。

「腹も減っただろう、好きなだけ食べろ」
「いただきます」

まるで子供に言い聞かせるような言い方だなと内心少しの切なさを覚えながら、手を合わせてから朝食を頂く。
コンビニで買ったという割には、オムレツにサラダ、ヨーグルトもあってバランスを気遣ってくれている。
さっきキッチンを覗くとフライパンなど使い込んだものが置いてあったが、足下には開いた段ボールがいくつか置いてあった。

「森山さんって料理するんですか?」
「そうだな、昔はよくやった。
親が母親一人で朝から晩まで仕事していたから、俺が一切の家事をしていたんだ」

初耳だ、かなり苦労されたのだろう。
男子が学業をしながら家事をして母親を支える、きっとお母さんは心強かったに違いない。
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