初恋の糸は誰に繋がっていますか?

森山さんは私の家の前で車を止めて下ろしてくれるのかと思いきや、近くのパーキングに停めると一緒に家に行き、部屋などに異常が無いか確認しに行くという。
家を確認したいというのはこういう意味だったのか。
アパートについて、まずは郵便を取ろうと郵便受けの並んだ場所に向かう。

「郵便は気をつけた方が良い」

彼の注意を聞き、緊張しながらポストを開けると何枚かの郵便物が入っていた。
それを確認すればダイレクトメールと電気料金のお知らせのみに私は安堵した。

「大丈夫そうだな。次は家の方を確認しよう」

やはりそこも一緒に確認するのは当然だと言わんばかりの彼をもうここで大丈夫ですと言うわけにも行かず、一緒に廊下を進んで角のドアにキーを挿す。
隣にいる森山さんはドアに視線を向けたり周囲を見たりとかなり注意を払ってくれている。

「ありがとうございました。
後日お礼をさせて下さい」
「そんなのは良いから、まずは家の中を確認してきなさい」

既にお父さんかお母さんかのような過保護ぶりに、私は言うとおり部屋を確認する。
小さな部屋で隠れる可能性の場所などたかが知れている。
森山さんはドアを開けたまま部屋にいる私の様子を見ているようだった。
短い廊下を戻り森山さんに報告する。

「大丈夫です、誰もいません」
「何か無くなっていたり、不自然に物が動いたりはしていないか?」

そこは気にして見てなかった。
そう言われてもどこに何を置いてくらいならわかるけれど、細かく位置が変わっているかなんてわからない。

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