初恋の糸は誰に繋がっていますか?
未だ森山さんはドアを半分開けたまま黙って私を見下ろしている。
私は笑顔を作り、
「本当に色々とありがとうございました。
明日からはしっかり仕事に打ち込ませて頂きます」
「そうじゃない」
「え?」
「君が真摯に仕事に向き合っていることくらい知っている。
約束して欲しい、少しでも何かおかしいと思ったら警察か俺に連絡すること。
いいね?」
有無も言わせないほど、森山さんの表情は硬い。
私ははっきりとした声で、お約束しますと返事をすると、彼はドアを閉めなさい、その後に帰るというので私は再度頭を下げて礼を言うとドアを閉めた。
鍵のかかる音を確認していたのだろう、ドアのスコープから外を覗けば森山さんと目が合って驚いてのけぞった。
スコープ越しに目が合う何てことは無いのに、彼は私が見るのを見越していたかのように思えた。
靴音が遠ざかっていき、再度スコープを覗けばそこには誰もいない。
私は息を吐いて部屋に入った。
何となく先ほど森山さんが指摘したことが気になり、再度テレビの裏などをチェックするが、特に何も無いというかわからない。
流石に部屋に入ってくるなんて事は無いだろう。
鍵を無くしたことも無いし。
自分の部屋で座り込むと、何だかドッと疲れが出てきた。
森山さんの家に一晩泊めて貰ったこと、車での出来事などが蘇り、顔が熱を持つ。