初恋の糸は誰に繋がっていますか?
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翌日の夕方、久しぶりに下村さんのフィグス含めた会議があり終わろうとしていたときに下村さんが手を上げた。
「まだ初めて一ヶ月経っていませんが、やはりよりよい連携を図るためにも飲み会をしませんか?」
ウチの会社のメンバーは八名。
うち私を含めた半数が女性なのだが、二人が独身で下村さんとゆっくり話したいと以前から言っていた。
そのせいかその二人は顔を見合わせると、
「是非!
やはりそういう交流も必要な事だと思います」
「私も!」
声を揃えて賛同し、唯一既婚者である女性はどちらでもという表情だ。
「以前はこういうの、若い子は面倒がったんだけどねぇ」
最年長の男性部長が感心したように女性陣を見ると、賛同した女性達が場合によります!とつっこんで軽い笑いが会議室に広がった。
「私は夜予定があるのですが少しだけ顔を出させて頂きます」
常務の言葉に下村さんがにこりと笑う。
「皆さん参加でよろしいですか?」
皆が行くというなら私も行くしか無い。
私も頷くと下村さんは目を細めた。
「では決定で。
時間は七時にしましょう。
この駅近くのお店を探します。
食べられないものとかあったら教えてください。
でもただの好き嫌いは却下です。むしろウェルカムだと取りますから。
店が決まったらチャットツールに流しますのでご確認下さい」
場の雰囲気が彼の軽口で明るくなり、何だか大学時代のゼミを思い出した。
彼は人の心を掴むのが美味い。
ゼミも彼が主導するようになってよくイベントが行われ、それにより仲は良くなったしカップルもいくつか成立した。
その中の一つが自分だったことを思い出し、今度は傍観する立場でいられることに妙な安堵を覚えた。
彼は人気者だった故に、女子達からあからさまな嫌がらせでは無いものの近いことはあった。
二度とそんな思いはごめんだし、そもそも彼にはもうそういう気持ちはない。
彼とはあくまで仕事を円滑にするための最低限の接触にすべきだ。
そう思いながら私は席を立った。