初恋の糸は誰に繋がっていますか?


決まった飲み会場所は、ちょっとお洒落な和食系居酒屋だった。
個室、そしてヘルシーな料理に綺麗な店内、女性のグループが多いのも頷けた。

常務以外の七名が集まり、見事下村さんを挟むようにうちの会社の女性達が席を陣取っている。
常務は少し遅れるそうで、それが寂しい。

「下村と同じ大学だったそうですね」

私の隣は同じ会社の女性である小島さんだったが、反対の席から私を覗き込むように下村さんの会社の後輩である山本さんが声をかけてきた。
ショートカットで少しそばかすのある表情のあまりない女性で、口数の少ない人という印象だったので話しかけられたことに驚いた。

「えぇ、そうなんです」
「下村が言ってました、運命ってあるんだなって」

隣の小島さんがビールのジョッキを持ったまま私に意味深な視線を投げる。

「いやいや、何も無いですよ?」
「私聞いちゃったよ、下村さんが下の名前を呼んでるの」

前で盛り上がる下村さん達に聞こえないように小島さんが言った言葉に私は焦った。
やはり聞いていた人が常務以外にもいたんだ。
近くに座る男性達は、男性達だけで盛り上がっている。

「えーっと、ゼミの後輩でその」
「付き合っていたんですよね?
どうです?今の下村は」

必死に何とか交わそうとする私に、山本さんは遠慮無く切り込んできて私は言葉に詰まる。
そもそもなんでそんな事を聞いてくるのだろう。そもそも何故そこまで知っているのか。
もしかして彼女は下村さんを好きだったりするのだろうか。

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