初恋の糸は誰に繋がっていますか?

母親が私を抱きしめ泣いていたのは、どこの場所だっただろう。
公園だったか、家だったか、外か中だったかすら思い出せない。
犯人は捕まったが、その犯人がお兄ちゃんに怪我をさせたと知って詳しく母親に聞こうにも、事件を忘れさせたいのか私があの日のことを聞くことを母は嫌がった。
お兄ちゃんにお礼が言いたいという私を、母は何故か止めた。

お礼が言いたい。何よりもお兄ちゃんに会いたい。

なのに母があまりに凄い剣幕で怒るものだから、私は怒られるのが怖くて言うのを我慢した。
今思うと母としては、あの事件に私が遭ってしまった事を悔いていたのだろう。

その事件からおそらく二ヶ月ほど過ぎたある日、学校から帰って家のポストを見ると手紙が入っていた。
白の絵柄も何も無い封筒に入った手紙には、表に私の名前だけ。
すぐに誰からか思い当たり、部屋に駆け込んで急いで中を開ける。
やはり手紙はお兄ちゃんからのものだった。

< 7 / 158 >

この作品をシェア

pagetop