初恋の糸は誰に繋がっていますか?
「僕の個人的な連絡先、消したよね?
あれから届かなくなったし、ブロックしてたのかも知れないけれど」
大学卒業と同時に消してしまった。
私は彼を見られずに俯く。
「教えて、理世の連絡先。
必要なときにしか連絡しないって約束する。
だから君からも何かあればすぐに連絡して欲しいんだ」
真剣な声を聞きながら迷ったが、結局彼に私の連絡先を伝えた。
彼はホッとしたような顔ですぐに私に自分の情報を返信してきた。
「不審者の情報、こっちも新しい情報あればすぐに教えるから。
じゃぁ気をつけて。
それと、例の件真剣に考えてみてね」
彼はそういうと森山さんのように玄関までついてくることもなく、アパート入り口で帰っていった。
部屋に入り家の中を確認する。
やはり何か違和感は無い。
鞄からスマートフォンを出すと、そこには森山さんからいくつかの着信とメールが入っていて、私は焦ってメールを開いた。
『今日は行けなくてすまなかった。
何か不安なことは起きていないか?』
それだけの文章に、私の胸は熱くなる。
スマートフォンが震え、画面には森山さんの名前。
「はい!」
『遅くにすまない、無事に帰ってきたのか?』
「はい。
今部屋に帰ってきたところで、常務からの電話に気付かずに大変失礼致しました」
『今はプライベートな時間だ、かしこまらなくていい』
「は、うん、やっぱり無理」
言い直し再度降参すると電話口から軽い笑い声が聞こえた気がした。
『帰り道は大丈夫だったか?』
「それがフィグスの下村さんが同じ駅に住んでいて、家まで送ってくれたんです。
友達とルームシェアしているそうで、その友達が時々帰宅途中の女性をつける不審者がいると言ってたそうなんです」
『そうだったか、一人で帰るよりは良かったんだろうな』
少し彼の声が低くなったような気がするけど気のせいだろうか。