初恋の糸は誰に繋がっていますか?

第五章 私を助けてくれるひと


あれから数日プロジェクトの会議も無く、自分に割り当てられた仕事をしながら本業である総務の仕事に忙殺されていた。

本日も総務部で会議。
何せ春から初夏はやることが多い。
いや、年明けからも忙しかったけれど。
健康診断の実施は終えたが、実施した病院や産業医と話し合い、やはり我が社のメタボリックシンドローム率の高さが問題となり対応を考えることになった。
何せ今度売り出す商品は『特定保健用食品』の認可を消費者庁から取ったもの。
それを売り出す企業のメタボリックシンドローム率が高いというのは企業イメージに関わる。

会社には社員食堂は無い。
だが契約している弁当の宅配業者はある。
社員の希望で金額と量を優先していたが、当然カロリーの少ない物、健康に重きを置いた物の希望もそれなりに届いていた。
だがそうなると単価は自然と高くなる。
希望者はいるが、契約するまでの安定的な数字になるかは不透明で止めていたのだが、そこも含めて見直しをすることになった。

会議を終えちょうどお昼。
手を上に上げてのびをしていると、奈津実が会議室を覗き込んでいた。

「終わった?」
「ごめん、待たせた」

今日のお昼は奈津実と外食に行く日。
一か月に二回ほどはお弁当などでは無く近くのお店でランチをするのだ。
店は沢山在るのでお互い色々開拓するのは楽しい。

二人で初めて入ったのは野菜をふんだんに使うのが売りのお店。
店内はコンクリートが打ちっぱなしの天井や壁だが、テーブルなどのインテリアは明るい色調の木製。
至る所に観葉植物が置いてあり、白シャツに腰にはエプロンを巻いたスタッフはいかにも自然派レストランスタッフという感じだ。

「ヘルシーさって大事だけど、毎回これだと飽きるんだよね」

奈津実と私は一日の緑黄色野菜が取れるドリアを頼み、奈津実はメニューを見ながらそんなことを言う。

「確かに。油物は多いと胸焼けするし」
「でもさぁ、がっつりハンバーグとか食べたいときもあるじゃ無い?」

奈津実の言葉に私も同意する。
不意に下村さんと行ったハンバーグを思い出す。
確かに久しぶりに食べるあのハンバーグはやはり美味しかった。

「ところで、下村さんとはどうなっているわけ?」

水を飲んでいた私は奈津実の言葉に咳き込む。

< 74 / 158 >

この作品をシェア

pagetop