初恋の糸は誰に繋がっていますか?
「な、なに急に。
というかなんで奈津実が下村さんを知ってるの?!」
「彼から話しかけられたの。
プロジェクト始まってそんなに経ってなかったんじゃ無いかな。
二人で外でお弁当食べていたのを見かけたらしくて。
聞かれたわよ、金沢さんって誰か付き合っている人がいるの?って」
まさかの内容に困惑した。
いつの間に奈津実に接触し、そんなことを聞いていたのか。
プライベートをこういう形で詮索されたのは良い気分はしない。
「先日もわざわざお菓子持って来て、自分が過去に彼女を傷つけてしまって警戒されているから、もしも彼女が悩んでいることがあるのなら教えて欲しいとか言われて」
「そんな事まで?!」
「その顔が本当に深刻そうと言うか苦しそうでね。
今のところ何も聞いてませんって答えたら連絡先渡されたよ。
理世は貴女になら本音を話すだろうから、何か気がかりな事があったらすぐに連絡が欲しいって。
もしかして何かあったの?例のストーカーとか」
下村さんの行動力にあっけにとられていたが、奈津実があまりに心配そうにするので例の帰り際の不審者の話をした。
森山さんに一度見つかり叱られて送って貰ったことは言ったが、流石に泊まったことは言えるはずも無く秘密だ。
そして先日下村さんと同じ駅で送って貰ったときにその話しをしたことも話した。
奈津実は、なるほどと出てきた熱々のドリアを平然としながら口に運んでいる。
猫舌の私は必死に冷ますので精一杯というのに。
「だから深刻そうに菓子折まで持って私に頼んできたんだ。
でも常務が理世を心配するメンバーに入ってるのは驚き。
それも叱られたってのは凄いね」
「常務にはとても心配させてしまって本当に申し訳なかったんだ。
一階のオートロック無しの我が家には、二人して信じられないという顔されたけど」
「流石の私でもその条件だと住まないわ」
「なかなか条件が揃わなくてあそこになったって以前も話したじゃ無い」
「そのおかげであんなイケメンに心配されていると。
一人は私を買収しようとまでして」
「買収って」
「最初は私に気があるのかと思ったら、口に出すのは理世のことばかり。
最初の一回だけ金沢さんって呼んだけど、あとは理世って呼んでて、彼、今も理世の事好きよね?」
「いや、それは」
最初の頃下村さんから言われたことを思いだし、きっぱり違うと言えなかった事で、奈津実はへぇーと面白そうな顔で私を見る。