初恋の糸は誰に繋がっていますか?

『間に合わせてくれて助かった。
こちらも課長と話したが、あの男の代わりに他の者が葬儀に行くことになった。
そもそも既にその会社については他の者が引き継いでいるそうなのだが、先方が間違って前の担当者であるあの男のメールに送ってしまったようだ。
となると他にも報告漏れや引き継ぎ出来てない部分など出てきそうだな』

呆れたような声に、心から同意しますと言いそうになる。

「常務が対応していた下さったおかげで取引先とこじれずに済みます、ありがとうございます」
『いや、君のおかげで先方に不快な思いをさせずに済んだ、礼を言う。
ところで、この頃は大丈夫か?』

後半は例のことを心配しているんだとわかり、私はそれだけで嬉しく思ってしまう。

「大丈夫です、何かあれば連絡しますので」
『そうか。
送ってやりたいんだが、まだ仕事が残っている。
気をつけて帰りなさい』
「はい。
常務もどうぞ無理しすぎないで下さいね、ご飯もコンビニばかりじゃ駄目ですよ」
『あぁ、わかった』

受話器越しに、くくっと笑い声が聞こえ、お疲れさまと言う言葉で電話は切れる。
低く、少しだけプライベートでの彼の声が聞こえた気がして頬が熱い。
受話器を置いて息を吐く。
そもそも私の最後の言葉は部下として正しかったのか、何だかそれを越えた存在として話してしまったような気がして恥ずかしくなった。

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