初恋の糸は誰に繋がっていますか?
「数度会っただけで、それも二人きりなど僅かな時間だけだったのに婚約したと広がったんだ。
すぐに誤解を解くつもりだったが、彼女からこの誤解をそのままにして欲しいと頼まれた。
その間に父親を説得したいとのことで、こちらも余計な縁談話が来なくて良いと了承した。
だが私が誤解されると困る状況に変わったため、彼女に今後会わないことを伝えた。
彼女はそれが後押しになって、交際している相手を打ち明ける決心をしたらしい。
今朝、なんとかなりそうだと何故かお礼のメールが届いたよ。
こちらも利用していた訳だから、申し訳ないと返事をしたところでね」
ぽかんとしていたのだろう、私の顔を見て森山さんは眉を下げる。
「そういうことなのだが、誤解は解けただろうか」
「たぶん」
「多分とは?」
「頭がおいついていなくて」
「だからそもそも私に交際相手はいないから君が心配することもないし、同居することについての問題も消えたと言うことだ」
ハッとすれば森山さんは口元を緩めた。
「君に誤解されて気遣われているのも悪い気もしなかったんだが、流石に同居の話をするのに誤解されたままでは駄目だろう?」
私は首をかしげた。
まるで森山さんが私を思って行動したように取れてしまう。
「そういうことで、私との同居を前向きに考えて欲しい」
真剣な森山さんの視線から思わず逃げた。
下村さんからも誘われていることで、後ろめたい気持ちになった。
わざわざ話す必要も無いと思っていたけれど、ここまで真っ直ぐに私と向き合ってくれたのなら、下村さんとのことも隠すのはいけないのかもしれない。
「実は、下村さんからも同居を誘われているんです」
「何故?よりを戻したのか?」
「いえ、違います!
以前送ってもらったときに同じ駅だとわかったのですが、下村さんとルームシェアしている人が近々出て行くようで。
私の家を見たら安全面が心配だから来ないかと」
妙な罪悪感を抱きながら短く説明する。
森山さんが身体を起こした。