初恋の糸は誰に繋がっていますか?
怖い。
お兄ちゃん!
鼓動が早まり、呼吸するのも苦しい。
知らないうちに手に持っていたスマホを、震える指でタップした。
『はい』
「・・・・・・助けて」
『今どこだ?!』
「家の中。たぶん、ばれた」
『すぐに行く。
俺が行くまで絶対にドアを開けるな。
そして何か不審な音がすればすぐに警察に連絡しろ。
一人で待てるか?!』
「うん」
『良い子だ。すぐに迎えに行く』
途中から泣いていた。
声も震えて、上手く話せなかった。
彼は怒ることもなく、すぐさま冷静で低い声が私の強ばった心にしみていく。
私は電気をつけることも出来ず玄関でうずくまっていた。
しばらくしてスマホが震える。
表示の名前を見てすぐに出た。
『いまマンションについた。
周囲を確認したが誰もいない。
今から部屋に行く。
俺が玄関前に行くまで開けるな。
開けるのはドアスコープで確認してからだ』
ドアの外に靴音が聞こえ身体がぎゅっとする。
大丈夫、これは彼だ。
『今ドアの前だ。確認できるか?』
私はスマホを耳に当てながらそっとスコープを見て、ドアを開けた。
瞬間、手が伸びてきて抱きしめられる。
熱い身体からは、彼が急いで駆けつけたことを実感させた。
「無事で良かった」
彼の声を聞き、私は彼の胸で泣いてしまった。
「大丈夫、もう大丈夫だ」
彼の手が優しく私の背中と頭を撫でてくれる。
来てくれた。
その安心感で膝が崩れそうになったのを彼が受け止め座らせてくれた。
「落ち着いたらうちに行こう。
荷物をまとめるのもゆっくりでいい。
もう大丈夫だ、俺が側に居る。
怖がらなくていい」
指がそっと私の涙を拭ってくれる。
森山さんが来てくれた。
もう私はそれだけで心から安心できていた。