初恋の糸は誰に繋がっていますか?
「俺は迷惑だなんて微塵も思っていない」
「森山さんは優しい人です。
だからといってそれに甘えていけないこともわかっています、すみません」
ふう、というため息が聞こえまた俯いた。
「悪い、ため息は俺に対してだ。
どうしても上手く伝えられない。
俺が君にここにいて欲しいと願っている、そう言えば伝わるだろうか」
「何故、ですか?
例の、後悔していることがあるからですか?」
「後悔しているのは確かに変わらない。
でも今俺が見ているのは君だ。今の君だ。
君にいて欲しいと思っている」
どうしてなのだろう。
何故私がここまで森山さんに優しくされるのだろうか。
たまたまだってわかっていても、良い方に良い方に捉えてしまいそうになる。
「その、一つ聞いても良いだろうか」
森山さんは私の手を包んだまま難しそうな顔をしている。
「俺に電話をくれたけれど、彼、下村さんにも電話をしたのだろうか。
連絡がつかなくて俺に連絡したのか?」
「そんなんじゃないです!気がつけば押してたというか。
すみません、何も考えず」
「いいんだ、そうか、俺にだけ頼ってくれたんだな」
ホッとしたような表情になんだかくすりと笑ってしまった。
「あ、すみません」
「謝る事なんて無い。
これは無意識に俺を選んでくれたとうぬぼれて良いんだよな?」
私を包む手に少しだけ力が入る。
さっきまで怖くて申し訳なかったはずなのに、今は無性に恥ずかしい。
私を守ってくれるこんな素敵な男性から、そんな台詞を言われる日がくるなんて。
責任感からくるものでもやはり嬉しかった。
彼の問いに頷くと、彼の唇は穏やかに弧を描いた。
「嬉しいよ」
真っ直ぐな言葉にこちらが流石に恥ずかしくなって俯いた。
絶対に私の顔は赤くなっているはずだ。
彼の手がそっと離れ、自分の手が外気に晒される。
ずっと感じていた温かさが消えて寂しいと思ったら、彼は私の横に座った。
「夕食は取ったのか?」
「はい」
「コンビニ弁当とかじゃないよな?」
以前私が言った言葉を返される。
むしろコンビニ弁当でもなく、カップラーメンを食べるつもりだったと言いにくい。