初恋の糸は誰に繋がっていますか?

「どうやら食事はまだのようだな。
ぱっと作るならパスタか、キーマカレーもいけるか」
「キーマカレー!」

彼の独り言のように言ったメニューに反応すると、彼はハハッと声を上げて笑った。

「ではキーマカレーにしようか」
「すみません」
「謝るのはナシだと言っただろう?
むしろ誰かに食べてもらえるのなら作りがいもある。
君は何か見ていても良いし、シャワーを浴びるなり好きにしていれば良い」
「いえ、私も何かお手伝いを」
「テーブルに並べるときは声をかける。
あぁ、着替えを用意出来ないなら俺の服を貸そうか?」
「持ってきてます!」
「良い子だな」

完全な子供扱いに頬を膨らませ、荷物を持ってパウダールームに向かう。
後ろからは押さえているようでしっかり聞こえる笑い声が聞こえて、恥ずかしさと面白くなさで耳まで赤い気がする。
知らないうちに私の抱いていた恐怖感は薄れ、絶対動けないだろうと思っていたのにシャワーだけでも浴びようと思う気持ちになれた。

シャワーを浴びればさっぱりして、家で来ている可愛いパジャマでは無くシンプルな透けない色のTシャツと柔らかい素材のパンツにした。
準備は手伝うつもりだったのに、ダイニングへ来たのにあわせてテーブルに料理が並んでいく。
私も慌てて手伝い、森山さんは私を優しげな瞳で見下ろしている。
完全に子供扱いされているのは理解した。
好きな男性からそういう扱いをされるのは傷つくが、彼からすれば私など子供にしか見えないのだろう。
怖いと泣きじゃくるような女だ、子供に見られても仕方が無い。

作ってもらったキーマカレーは、適度な辛さ。
落ち着いたらお腹が減ってしまっていたので、一皿しっかり平らげてしまい気づく。
女の子は小食の方が好まれるだろうに思い切り食べてしまった。
だが森山さんは穏やかな顔で、おかわりはいるかと聞いていたので残りがあるなら明日食べたいですと伝えるとまた笑われた。

彼がここまで笑っているのは今日が初めてだ。
大きな口を開け大声で笑うわけじゃ無いけれど、軽やかな彼の笑い声は私まで嬉しくさせる。
その後森山さんは積み木を抜いていくゲームを持ってきてやろうと言い出した。
眠れない私を気遣ってのことだとわかっている。
やりたいです!と元気よく答えれば、また彼は笑みを含んだようなまなざしで私を見つめる。
それがこそばゆいけれど、今はただ彼に甘えていたかった。

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