初恋の糸は誰に繋がっていますか?


翌日。
私は自主的に休むと彼に伝えた。
どちらにしろ有休を取るように言われていたので仕事的にも休んで問題は無い。
森山さんは他社の人達とブレックファーストミーティングがあるそうで、朝六時半に出発するから寝ていて良いと言われたがもちろん起きた。

「今日は一日家にいて欲しいが大丈夫か?
食事は配達にしてくれ、使う店をリストアップして後で送る。
後は欲しいものがあればここに連絡すれば良い。
馴染みの外商の者がそれこそ食事から服まで用意してくれる」
「いやいや外商ってなんですか」
「今は俺が間違い無いという人間とだけ会うようにして欲しい。
不審者が君の知り合いという可能性だってあるのだから」

そんなことに思いが至らなかった。
見知らぬ不審者が相手だと思っていたけれど、知っている人の可能性だってあることを。
そう思うと会社も怖くなる。

「大丈夫、会社の人間は不審な者がいないか昨日から確認をしている。
近日中には疑わしい者がいればリストアップされるだろう」

私の相手をしながらそんなことをしていたなんて。
私の行動で森山さんに悪い影響が出たりしないか心配だが、そんなことを言えばまた謝罪だと困らせそうだし、彼の能力を信用していないように取られるのも嫌だ。

「ありがとうございます。
ここからは出ません。
森山さんの帰りを待ってます」

彼の手が私の頭を撫でる。
もうこれはくせのようになっているのかも知れない、森山さんも私も。

「できるだけ早く帰ってくるから。
じゃぁ行ってくる」
「行ってらっしゃい」

玄関で見送ると、彼は目を少し見開いて苦笑いをすると出て行った。

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