初恋の糸は誰に繋がっていますか?

「今は違う家にいるんです。
ですので大丈夫ですから」
『え?なんで?体調不良なのに?
もしかしてホテル?』
「いいえ、その、友人の家に泊まってて」
『もしかして何かあった?』

彼の声は緊張感を帯びている。
何も無いと答えても彼は納得せず、仕方なく誰かに後をつけられ友人の家に怖くて転がり込んでいるのだと話した。

『そんなことが。
俺を呼んでくれれば良かったのに』
「女の子の方が安心だったので」
『そうかもしれないけど、いざとなれば俺が助けるから。
だからさ、同居を急ごう。
友人も既に出て行って部屋は空いているから』
「ですから何度も言っていますが同居は出来ません」
『こんな怖いことがあったんだ、しばらくでもいい、おいでよ』
「お気持ちだけで。
もう仕事に戻った方が良いんじゃ無いですか?」

後ろから彼を呼ぶ声がして、やっと解放されると話題を振った。

『まったく。大切な話をしているのに。
また連絡するよ』
「お疲れ様です」

私はすぐさま通話を終わらせると、スマホを放り出しテーブルに突っ伏す。
あまり角を立てたくなくて断っているけれど諦めてくれない。
既に他の男性の家に転がり込んでいるというのに、バレたらきっと大変だ。
出来れば下村さんについては自分でなんとかしたい。
なんとかしたいけれどどうすればいいのかわからなくて、突っ伏しながら唸った。



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