偽りの夫婦〜溺愛〜
変化
紅羽さんは、俗に言う“スパダリ”だ。

びっくりするくらいにカッコいいし、賢いし、優しくて紳士的だし、何をするにも器用にこなす方。

私の、自慢の旦那様! 

そして、私の―――――……


「双葉、今日どうしたい?」

梅雨に入り、ジメジメしている休日。
それなのに爽やかな顔をした紅羽が、双葉の頭をポンポンと撫でながら聞いてきた。

双葉は紅羽に、ある意味ペットのようにいつも愛でられている。
そして、それを嬉しく思っている。

「紅羽さんのしたいことをしましょ?
何かないですか?
それとも、たまにはご友人と出かけてくるとか!」

「その間、双葉は何するの?」

「うーん…
ゆっくり考えます!」

「じゃあ…本屋に行こうかな?」

「わかりました!」

「あ、双葉も一緒に行くんだよ?」

「へ?」

「○○のモンブラン、食べさせてあげるから!」

「○○のモンブラン!!?」

双葉の好きなスイーツ店のモンブランだ。
双葉が食べてきた中で、断トツで美味しい! 
思わず食いつくように、身を乗り出した。

「フフ…!」
クスクス笑う紅羽。

「あ…す、すみません…」

「可愛いなぁ~、目をキラキラさせちゃって!
双葉って、ほんと飽きない!
一緒にいると、楽しくて癒される!」

(は、恥ずかしい…//////)
双葉は、顔を真っ赤にしていた。


“ゆっくり歩いて行こう”ということになって、二人は並んでゆっくり歩く。

車道側を歩いてくれる紅羽を、双葉は見上げた。

(本当に、完璧な人だ。
紅羽さんの言動一つ一つが洗練されていて、思いやりがある)

 
『お嬢様、危ないのでこちらへ……!』

双葉は紅羽を見て、込山と重ねていた――――――

込山も、完璧な男性。
いつも双葉を見てくれていて、まるで騎士のように守ってくれていた。

過保護に育てられた、双葉。
外の世界を知らない、双葉。
込山は、そんな双葉の狭い世界の中で大きな存在だった。

いつも一番近くで、包み込むように守ってくれた人だから。



本屋で紅羽が何やら難しい本を買い、近くのスイーツ店に向かった。

仲良くモンブランを食べ、向かいに座る紅羽の手が伸びてきた。
頭を撫でられ、双葉は思わず気持ち良さそうに目を瞑った。

「フフ…
今度は、双葉が決めて?
これからどうしようか?」

そんな双葉を見てフフ…と笑った紅羽。
反対の手で頬杖をついて聞いてきた。
< 13 / 36 >

この作品をシェア

pagetop