偽りの夫婦〜溺愛〜
「出来ればなんですが……」

「うん、言って?」

「紫陽花、見に行きたいです…!」

「あー、もしかして○○山であってる、紫陽花祭り?」

「ご存知なんですか!?」

「うん、亡くなった祖母がよく行ってて。
学生の頃は、よく一緒に連れて行かれてたんだ!」

「そうなんですね!
私も、毎年行ってて!
今年も行きたいなと…」

「うん、わかった!行こう!」

「良いんですか?」

「もちろん、良いよ!」

「もしあれなら、カヨを誘って行きます!
なので、紅羽さんは無理は……」

「えー、仲間はずれにしないでよ〜(笑)」

頬を含ませている紅羽。

(可愛い…/////)
微笑む、双葉。

「わかりました!
行きましょう!」
そう言うと、紅羽は嬉しそうに笑った。


一度自宅マンションに帰り、ランチを食べて行くことにした二人。

「双葉、たまには家事はお休みして」
そう言った紅羽が、キッチンに向かう。

「え?ダメですよ!
紅羽さんこそ、お仕事してるのに!」

「いいから!」
慌ててキッチンに来た双葉を押し返す。

結局紅羽が冷やし中華を作って(もちろん、彩り良し、盛り付け良し、味良しの完璧な冷やし中華)それを食べてから地下の駐車場に向かった。

リモコンキーで鍵を開けて、必ず紅羽は双葉を助手席に乗せてから運転席に乗る。

そうゆう紳士的なところが、ほんと…込山に似ている。

「双葉、頭気をつけてね!」
ドアの縁に頭をぶつけないように、庇ってくれる。


『お嬢様、お気をつけて乗られてくださいね!』

紅羽と込山が、綺麗に重なった―――――


「――――ありがとう!込山」

「………え?」

「……………
………っは!?ご、ごめんなさい!!」
思わず、込山への礼を言ってしまった双葉。

「フフ…僕は、込山じゃないよ〜(笑)」

紅羽は笑って言ったが……
とても、切なそうな顔をしていた。

「本当にごめんなさい!!」

「もういいって(笑)
双葉は、込山が大好きなんだから!
込山に会いたい?
それなら、込山呼ぼうか?」

「そ、そんな…
今日は、紅羽さんとのデート日なので…!」

「いいんだよ?
最初に言ったよね?
“君に好きな人がいて構わない”って!」

「そうじゃなくて…」

「ん?」

「吹っ切りたいんです…込山のことは。
前を向いていきたいんです……!
出来ることなら……」

「ん?」

「あ、いえ…」


出来ることなら……このまま紅羽さんを好きになりたい……!

……………なんて…言えないけど…
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