偽りの夫婦〜溺愛〜
30分くらい車を走らせて………

“紫陽花祭り”と書かれた公園に入った。
駐車場内は満車で、少し待って漸く停める。 

「………やっと、停められましたね!」
「だね(笑)
ここの紫陽花は有名だから、多いもんね!」

車から降りる時も、紅羽が助手席を開けて促し双葉を降ろす。

「はい、双葉!」
「ありがとうございます!」 

公園の入口から紫陽花が綺麗に咲いていて、双葉は早速スマホを出して写真を撮った。 

紅羽は、それを後ろから見つめていた。

「紫陽花と一緒に撮ってあげようか?」

「え?それは、だ、大丈夫です//////」

「どうして?
きっと綺麗だと思うんだけどなぁ!」

「恥ずかしいので…//////」

「じゃあ、僕とツーショットは?」

「え?//////」

「紫陽花をバックに、ツーショット撮ろう?」

「良いんですか?」

「いいよ!
僕達は、夫婦でしょ?」

自身のスマホを構えた紅羽。
双葉の腰を抱いて、グッと自分の方に引き寄せた。
ふわりと紅羽の香水の匂いがして、双葉の胸がドクンと鳴った。

「……/////」
「撮るよ〜
3、2ー1!」

そして、紅羽から送られた写真。

顔を赤くした双葉と、爽やかで綺麗な笑顔の紅羽が綺麗な紫陽花をバックに写っていた。

「綺麗…//////」

「そうだね!
やっぱ、双葉と紫陽花は似合うなぁ!」

(違うよ。
綺麗なのは、紅羽さんだよ……!)

双葉はそっと、紅羽を見上げた。

「ん?」
紅羽が双葉の方を向く。
一緒にスマホ画面を見ていたので、顔が間近に来る。

「……/////」

「双葉?」

「あ…/////の、喉乾きません?」

「うん、そうだね!
じゃあ…暑いし、冷たいジュース飲もうか?」

ジュースを買って、近くのベンチに座った。

「雨、降りそうだね…」
空を見上げて言う、紅羽。

双葉は、紅羽を見つめていた。

最近双葉は、紅羽ばかり目で追ってしまう。

込山と重ねているからなのか、紅羽自身になのか……

確実に双葉は、見惚れていた。 

「………」

「………」

「双葉、何?」

「あ、い、いえ!」

「雨降りそうだから、急いで見て回って帰ろ?」

「はい、そうですね!」

「あと…」

「はい」

「ダメだよ、そんな目で見たら」

「え……?」

そんな目?

「さぁ、行こ?」
「あ、はい!」
そう言って立ち上がり歩く紅羽を、双葉は追いかけた。
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