偽りの夫婦〜溺愛〜
自覚
双葉は幼い頃――――本気で白馬に乗った王子様が迎えに来て、自分はお姫様になれると思っていた。

それを恥ずかしげもなく、込山や友人達に話していた。

カッコ良くて、優しくて、強くて、何でもできて、いつも私の傍にいて守ってくれる人。

でも何故か、込山のことを王子様に重ねたことはない。

「あんなに大好きだったのに…」



「――――だから!
要は、込山さんのことは“憧れの人”だったのよ!」
カヨが持っていたデザートスプーンで、双葉を指して言った。

「え?」

「やっと気づいたか、お子様!(笑)」

「え?え?
どうゆうこと?」

「だから!
双葉の“好きな人は”紅羽さんだってこと!!」

「………」
(私が、紅羽さんのことを……?)

「双葉、まだ気づかないの?」

「カヨ…」

「双葉、結婚してからわかりやすいくらいに紅羽さんのことばっか話してたんだよ?
しかも、凄く嬉しそうに!
込山さんの時とは、大違い!
だから私、聞いたよね?
“紅羽さんのこと、好きなの?”って」

「………」

「双葉、今からわかるんじゃない?
双葉が今、一番傍にいてほしいのは誰?
楽しいこと、嬉しいことを共有したいのは?
悲しい時、辛い時に頭を撫でて慰めてほしい人は?
咄嗟の時、連絡してしまう人は?
……………ねぇ、双葉。それは、誰?」

「それは―――――……」



その日、カヨと別れて買い物をして帰ろうと思い、いつものスーパーに寄った。

「……/////」
(私、紅羽さんのこと好きなんだ……!)

顔がニヤけていた。

今日は、紅羽の好きな食べ物を作ろう。
そう思い、鮮魚コーナーに向かう。

シーフード野菜カレーが好きな、紅羽。
海老、ホタテ、イカをカゴに入れる。

「あとは……じゃがいもと玉ねぎはある。
人参……は、嫌いだった(笑)
ピーマンと…あ!ナスを入れよっと!」

紅羽は、具材がゴロゴロ入ったカレーを好む。

「よし!これで、いい……あー!
お米!!
お米がなかった!」


そして会計を済ませ、スーパーを出た。

「うぅ…お、重い……」

エコバッグを肘にかけ、お米を抱きかかえる。
そしてゆっくり歩いていた。
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