偽りの夫婦〜溺愛〜
自宅マンション前で降ろしてもらい、家に帰った双葉。

夕食の準備に取りかかった。
野菜を切りながら、最後アキヒコが言ってきたことを思い出していた。

『あ、ねぇ!
今週末、食事行かない?』

『え?』

『二人で!』

『二人!?』

『旦那に聞いてみてよ?』

『う、うん。
で、でも、二人はちょっと…
カヨも一緒に……』

『そうじゃなくて!
もし…“行かないでほしい”って言われたら、旦那は双葉ちゃんのことを女として見てるってことだろ?』

“旦那の気持ち、探ってみな?”
最後、そう言われたのだ。

(でも、もし快く“いいよ!”と言われたら………
私、立ち直れるかな?)


そして……「ただいま〜」と紅羽が帰ってきた。

「あ!おかえりなさい!」

「フフ…!ただいま!
ん!いい匂いがする〜!
今日は、カレー?」
微笑み駆け寄る双葉に、紅羽も微笑み頭をポンポンと撫でる。
そして、キッチンの方を見て言った。

「はい!
紅羽さんの好きな、シーフード野菜カレーです!」

「おっ!!やった!
嬉しいなぁ〜!」

紅羽は「美味しい!美味しい!」と言いながら、おかわりもして食べてくれた。

「ごちそうさま!
今日も、美味しかった!」

「良かったです!」

片付け、二人はソファで紅茶を飲む。
二人はいつも食後は、ソファに並んで座り紅茶を飲みながら色んな話をしている。

「え!?
重かったでしょ?」
今日買い物をしたことを話すと、紅羽は驚いたように双葉の顔を覗き込んだ。

「大丈夫です!」

「今度から、僕の休みの日に一緒に行こうね!
できる限り買って、足りない分だけその時に双葉が買いに行けばいいだろ?」

「本当に大丈夫ですよ?
今日はたまたまお米があったから、ちょっと重かったですが…」

「ダメ!
一緒に行こうね!」
紅羽は、両手で双葉の手を包みこんで言い聞かせた。

「はい!わかりました!」

「ん。
でも、大変だったね!」

「でも友人とたまたま会って、車で送ってもらったんです!
だから、大丈夫ですよ!」

「そっか!良かった」
ホッとしたように、紅茶を飲む。

「あ、そうだ…
あの、紅羽さん」

「ん?」
紅茶を飲みながら、耳だけ傾ける紅羽。

「その友人に、今週末お食事に行こうって誘われたんですが、い、行ってもいいですか?」

双葉は心臓をドキドキさせながら、窺うように聞いた。
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