偽りの夫婦〜溺愛〜
「はぁ!?
双葉ちゃん、ちゃんと言った!?」

次の日。
レストランで、カヨとランチをしている双葉。
返事をするため、アキヒコも同席している。
アキヒコが少し怒ったように言った。

「え?」

「“男と”って!」

「え?
言ってないよ。
友人と行くって、言ったの」

「旦那、女と会うって思ってんじゃない?」

「え?え?」

「あのさ!
全然!違うからな?
男と二人で食事と、女と二人で食事」

「え?じゃあ…紅羽さん、もしかして……」

「勘違いしてるわね、きっと!」

「そうかな?」

「双葉から“友人”って聞いたら、99パー“女性”って考えると思う」

「え?」

「ピュアなお姫様だしな(笑)」

「カヨ、どうしよう…
紅羽さんに話した方がいいよね?」

「当たり前でしょ!
つか!
旦那がいて、男と二人で食事って……
あり得ない!
裏切りよ!!」

「え!?う、裏切り!?
ど、どうしよう…
早く、紅羽さんに……」

「おいおい…
カヨ、言い過ぎ!
人には色々いんだから!
まぁ、カヨはそれで裏切られたもんな…
とりあえず双葉ちゃん。
今日、旦那が帰ってきてからで大丈夫だから、男と二人ってことを話しな?」

「う、うん…」


その頃紅羽は、完全に元気をなくしていた。

一文字も進んでいないパソコン画面を、ジッと見つめている紅羽。

今朝も、ぎこちないまま別れた二人。
双葉の切ない顔を見ていると、こっちまで苦しい。

せめて、どうして泣いていたのか理由が知りたい。
理由がわかれば、解決させられる道が見える。

先が見えない不安が、紅羽を襲っていた。

「薬師寺くん」
そこに、同僚が声をかけてきた。

「あ、お疲れ」

「たまには飲みに行かない?」
「だから、薬師寺は愛妻家だから無理だって!」
「でもたまには――――――」

「いいよ」

「え!?」
「いいの!?」

「うん、いいよ。
たまには、ね?」

双葉に会うのが、怖い。
紅羽は、そんな思いで同僚の誘いを受けた。

そして、双葉にメッセージを送った。

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