偽りの夫婦〜溺愛〜
酒を飲んでいたので、駅まで走りタクシーに乗り込む。
少し急いでもらい、自宅マンションに向かった。


双葉に会いたい――――

会って、この狂おしい想いを伝えたい。

紅羽はその思いだけに支配されていた。


玄関ドアをバン!と開けると……

「え……あ…紅羽、さ……」
双葉がペタンと、床に座り込んでいた。

「双葉!!」

「あ、あの!
紅羽さんに、お伝えした―――――」
言葉は、後に続かなかった。

双葉は、紅羽の腕の中にいたから。

「行かないで、双葉」

「え?」

「食事、行かないで!
僕の傍にいてよ……!」

「紅羽さん?」

「………………好きなんだ…」

「え……」

「双葉、君が好き…!!」

「え?え?」

「もちろん、一人の女性として」

「え…//////」
(う、嘘……)

ゆっくり離して、双葉の頬を包み込み、目を覗き込むようにしてはっきり言った。

「僕は、君が大好きだよ……!」

双葉の目から、涙が溢れ流れる。
「円華…さ…は?」

「円華への想いなんて、比じゃないよ?」

「私…き、です」
涙が次から次へと溢れて、言葉が出ない。

「ん?
ゆっくり、話して?」

「好き」

「ほんと!?」

「好き!」

「込山のことは?」

「勘違い、してたん、です」

「え?」

「ずっと、傍に、い、てくれた人、だから。
込山の、こと、恋愛感情だと、思ってました。
でも、違っ、た…
だって、紅羽さんに、対してと、全然違うから。
ここが!
苦しい!」

双葉が自身の胸辺りの服を掴み、訴えるように言う。

「紅羽さんを、想うと…
ドキドキして、ここが、痛いくらいに苦しいんです…!」

「うん//////」

「私、恋人いたことないから、わからないんです。
でも“これが”恋ですよね?」

「うん、僕も同じ! 
双葉を想うと、ドキドキして、痛いくらいに苦しい。
ずっと傍にいたい。
離れたくない」

「私達、両想いですか?」

「うん!両想い!」

「私達、やっと夫婦になれましたね!」

「そうだね!
僕の奥さん!」

「あの、それで…」

「ん?」

「昨日のことなんですが…」
 

「うん。
泣いた理由、教えてくれる?」
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