偽りの夫婦〜溺愛〜
「――――なので、本当は行く気はなかったんです。
ただ…紅羽さんの気持ちが知りたくて……」
ソファに座り、紅羽が双葉の手を包み込んで話を聞いている。

「そうだったんだね」

「紅羽さんに“わかった!”って言われて、私の片想いだって思ったら苦しくなって…
試すようなことして、すみませんでした…!」

「ううん!もう、いいよ?
でも!」
頭を下げる双葉の頭をポンポンと撫でて、こちらを向かせる。

「は、はい!」

「“男と”だなんて、ダメだよ?」

「あ、はい!すみません!」

「友達と食事ってだけでも、嫌なのに…
だから双葉、友達と食事は僕の仕事中のランチだけにして?
できる限り、僕の傍にいて?
僕も、ずっと双葉の傍にいるから!」

「はい!」

微笑み頷く双葉に、紅羽も微笑んだ。
そして、ゆっくり頭を撫でる。

気持ち良さそうに目を瞑る、双葉。

「………」
紅羽は、頭を撫でていた手を頬に移動させた。
そして親指で、口唇をなぞる。

「え?紅羽さ―――――」
目を開けると、紅羽の顔が近づいてきて口唇が重なった。

目を見開く、双葉。

「ごめんね、双葉があまりにも可愛くて…!」

「……/////」
顔を真っ赤にする。

「もう一回、してもいいかな?」
口唇をなぞってくる。

「……/////」
顔を赤くして、見上げる。

すると、食らいつくように紅羽の口唇が重なってきた。

「んんっ…!!?
………んはぁ…」
思わずびっくりして、目を見開く双葉。

「………だから言ったよね?
“そんな目で見ちゃダメ”って!」

「え?」
(そんな目、どんな目?)

「煽られて、大変なんだから……!」

「え?え?
煽るって、何を?」

「…………また、したくなっちゃうでしょ?」

「え?」

「それに、それ以上のこともシたくなる」

「え?
…………あ…/////
で、でも私…初めて……/////」

「うん、わかってるよ。
ダメ?かな…?」

「あ、あの…」

「うん」

「……っ…」
双葉の身体が震えだす。

「双葉?」

「あ…ご、ごめんなさい…」
(ど、どうしよう…こ、怖い…)

すると、ふわりと紅羽に抱き締められた。

「大丈夫。
無理矢理はしないよ?
双葉が受け入れられるまで、いくらでも待つからね…!」

紅羽はずっと、安心させるように双葉の背中を撫でていた。
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