偽りの夫婦〜溺愛〜
「え……」

ガシャンと、リビングのドアが閉まる。
何故かその音が、妙に切なく聞こえた。

(もしかして、私が構えたから傷つけたんじゃ……)

セックスを、拒否したように思われたのかもしれない。

そんなつもりはない。
確かに怖いが“紅羽にはなら”全部捧げていいと思っている。

双葉は慌ててリビングを出て、洗面所に向かった。
「紅羽さん!」

「あ、今風呂沸かしてるから、入って寝ようね!
あとベッドくっつけるって話だけど、明日買いに行くんだし、新しいベッドが来るまでそのままにしておこう!」

「え……」
(やっぱ、傷つけたんだ…私…)

「ん?双葉?」

「あ、あの!
ごめんなさい!
私、違うんです!
拒否したのではなく………」  

「双葉が謝ることじゃないでしょ?」

「……/////あ、あの…/////」

「………」

「私、紅羽さんと…/////」

「ダメだよ、双葉」

「え?」

「いつも言ってるよね?
“そんな目で見ないで”って!」  

「………」

そして……それぞれ風呂に入り、それぞれベッドに横になった二人。

「おやすみ、双葉!
明日、デートしようね!」

「………は、はい。おやすみなさい」

「………」

「………」

「………」

「………」

シン…と静まり返っている、寝室。

どうすればいいのだろう……

(私から、誘う?)

ブルブル首を横に振る。
(無理無理無理無理無理!!!)

「………」
(でも……//////)

双葉は、静かにベッドを下りた。
そして、隣の紅羽のベッドに近づく。

「紅羽…さん」

「………」

「寝てる、よ…ね…」

自分のベッドに戻ろうとして止まる。

「………」

双葉は……
紅羽のベッドに入った。

ゴソゴソして、紅羽の腕の中に入った。

「……/////フフ…幸せ…//////」
どうして紅羽の腕の中は、こんなに心地良いのだろう。

腕の中から見上げた。
「綺麗…//////」

寝顔まで綺麗だ。

頬に触れ、紅羽がいつもしているように口唇をなぞった。

そして……ゆっくり顔を近づけ、口唇を重ねた。
チュッとキスをして、離そうとすると………

――――――!!!?

突然、身体が反転した。
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