偽りの夫婦〜溺愛〜
プラトニック・ラブ
新婚生活という名の“共同生活”が始まって、一ヶ月が経った――――――


双葉のスマホのアラームが鳴る。

バッと起き上がり、アラームを止めた。
隣のベッドを覗く。

紅羽はまだ眠っている。

「起きてない…よ…ね?
……………良かったぁ…」

音を立てないように、ベッドを降りて寝室を出た。

顔を洗い、軽くメイクをする。
「よし!」

気合を入れてキッチンに向かい、朝食と弁当を作り始めた。

もう少しで出来上がる頃……

「あ!時間!」
寝室に行き、寝ている紅羽を起こしに向かった。

「紅羽さん、紅羽さん!
時間ですよ〜」

軽く揺すると、紅羽が唸り声をあげる。
「んん…
あ…双葉…んー、朝…か……」

「おはようございます!」
(寝起きから、イケメン/////)

ゆっくり起き上がる紅羽を見ながら、見惚れていた。
込山を想いを寄せている双葉でさえ、見惚れる程の容姿の完璧さだ。

「おはよ!」
双葉の頭をポンポンと撫で洗面所に向かった紅羽を見届けて、双葉もキッチンに戻った。

ダイニングテーブルに、朝食が並ぶ。

「わぁー、今日も美味しそうだね!」
「フフ…良かったです!」

「よし、食べようか!」
「はい!」

「「いただきます!」」

「…………ん!旨い!」
紅羽の朝食は洋食。
しかも、必ず決まった食事だ。

トーストと野菜サラダ、野菜スープ、フルーツ入りのヨーグルト。

野菜スープを飲み、微笑んだ。
その姿を見て、双葉がフフ…!と笑い出す。

「ん?双葉?」

「フフ…フフフッ…!!」

「え?え?どうして笑うの?」

「紅羽さん。
その野菜スープ、人参入ってますよ?(笑)」

「えーーー!!!?人参!?」

紅羽は、人参が大の苦手。

「わからないでしょ?(笑)」
「うん、全然!」

「細かくすり潰して、スープに溶けさせたので!
よし!この調子で、紅羽さんにバレないように人参を食べさせますので!(笑)」

「えー、それは勘弁して?」

「でも今紅羽さん、スープ美味しいって言ってくれましたよ?」

「うん、本当に美味しいよ?
でも人参は……
ほら、見て?鳥肌……」

「ほんとだ…
わかりました!
紅羽さんは、今後人参抜きにします!」
(あ…でも、お弁当のハンバーグには細かくして入れたんだよなぁ…
まっ!いいか!黙ってよう…)

「ありがとう!」

満面の笑みの紅羽に、双葉は「紅羽さん、可愛いですね!」と笑った。
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