「君を愛することはない」ってラブラブハッピーエンドへの常套句じゃなかったんですか!?

1.ラブラブハッピーを目指したい!

 ――愛に違いはないけれど。
 
“割合的には絶対私の方が圧倒的に大きいわよね?”

 なんてつい考えてしまう私ことアリーチェ・ラヴェニーニが見つめる先は、愛しい愛しい婚約者であるコルン・ギズランディが所属している第四騎士団の演習場である。

「きゃー! 格好いいわ! 素敵よコルン! 好き!」

 訓練の迷惑にならないようにと休憩になるまで見つめるだけで我慢していた私は、彼らが休憩に入ったのを確認してそう叫ぶ。

 予定のない日は毎日通っているせいで他の騎士たちも慣れたものなのか、私の叫び声に反応したのはコルンただ一人で、汗を大判の布で拭いながら軽く右手を上げて応えてくれた。

“やだ素敵っ”

 寡黙な彼が、彼なりに応えてくれるその姿に痛いほど胸の奥がきゅんきゅんする。

「ほんっとにコルンってば格好いいわ!」

 黒髪を清潔な長さに整え、切れ長で緑色の瞳はまるでエメラルドのように輝いている。
 何時間でも、いや、何日でも見続けられると私は思わず感嘆の声をあげた。
 
「そろそろ飽きてくれないかしら、毎日毎日付き合わされる身にもなってほしいんだけど」
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